【健康コラム 85 】夏の疲れは「暑さ」だけじゃない?~冷房で起こる“寒暖差疲労”~
「しっかり寝ているのに、なんとなくだるい」
「冷房の効いた部屋にいると、体が重く感じる」
「外に出ると一気に疲れる」
夏になると、このような不調を感じることはありませんか?
「暑さのせいかな」と思いがちですが、実は夏の疲れには、暑さそのものだけでなく“温度差”が関係していることがあります。
猛暑の屋外から冷房の効いた室内へ入り、また暑い屋外へ出る――。現代の夏は、一日の中で何度も大きな温度変化を経験します。
そこで今回は、夏の「なんとなく不調」を考えるキーワードとして、“寒暖差疲労”に注目してみましょう。
🌡️ 夏なのに「寒暖差」? 意外と大きい屋外と室内の差
「寒暖差」と聞くと、春や秋など季節の変わり目をイメージするかもしれません。
ところが夏も、体にとっては温度差の大きい季節です。
例えば、気温35℃を超える屋外から、冷房の効いた25~27℃程度の室内へ入れば、一気に10℃近く環境が変わることがあります。
さらに、
自宅 → 暑い屋外 → 電車 → 屋外 → スーパー → 屋外 → 職場
というように、一日の中で「暑い・涼しい」を何度も繰り返すことも珍しくありません。
私たちの体は、この変化に合わせて体温を一定に保とうとしています。
環境省も、外気温と室温との差が大きくなることによる身体への影響について注意を促しています。
🧠 温度差に対応しているのが「自律神経」
暑い場所にいると、私たちの体は皮膚の血管を広げたり、汗をかいたりして熱を外へ逃がそうとします。
反対に、涼しい場所では血管を収縮させるなどして、熱が逃げすぎないよう調節します。
こうした体温調節に深く関わっているのが自律神経です。
つまり、
暑い → 涼しい → 暑い → 涼しい
という環境を繰り返すたびに、体はその環境に合わせようと調節を続けています。
このような温度変化による負担と関連して感じる「だるさ」「疲れやすさ」などが、一般に寒暖差疲労と呼ばれることがあります。
ただし、「寒暖差疲労」は特定の病気の正式な診断名というより、温度差の大きい環境で生じるさまざまな不調を説明するときに使われる言葉として理解しておくとよいでしょう。
😮💨 「なんとなく調子が悪い」もサインかも
寒暖差の大きい生活が続くと、
- 体がだるい、疲れやすい
- 手足やお腹が冷える
- 肩や首がこる
- 頭が重い
- 食欲が落ちる
- 寝ても疲れが取れた感じがしない
など、「病気というほどではないけれど、なんとなく調子が悪い」と感じることがあります。
ただし、こうした症状は脱水、熱中症、睡眠不足、感染症、貧血などでも起こります。
「寒暖差疲労だろう」と決めつけず、症状が強い、長く続く、いつもと明らかに違う場合には医療機関へ相談することも大切です。
❄️ 大切なのは「冷房を使わない」ことではありません
ここは夏の健康管理で特に注意したいポイントです。
寒暖差が負担になるからといって、冷房を我慢するのはおすすめできません。
猛暑では、冷房は熱中症を防ぐために重要です。特に高齢者は暑さを感じにくくなることがあるため、「暑く感じないから大丈夫」と判断せず、室温や湿度を確認することが大切です。
環境省が示している「室温28℃」もあくまで目安であり、エアコンの「設定温度を28℃にする」という意味ではありません。外気温や湿度、建物の状態、その人の体調などに応じた調節が必要です。
目指したいのは、
「冷房を控える」のではなく、「冷やしすぎを避けながら上手に使う」こと。
これが夏の寒暖差対策の基本です。
🌿 今日からできる「寒暖差疲労」対策5つ
① 冷房は「設定温度」より実際の室温を見る
同じ設定温度でも、部屋の広さ、日当たり、人の数などによって実際の室温は変わります。
温湿度計を置き、自分が過ごしている場所の温度を確認する習慣をつけてみましょう。
エアコンの風が直接体に当たり続けないよう、風向きを調節することもポイントです。
② 羽織るものを一枚持っておく
スーパー、電車、病院、飲食店など、自分では冷房温度を調節できない場所もあります。
薄手のカーディガンやストールなどが一枚あるだけでも、首や肩、腕などの冷えを防ぎやすくなります。
特に「冷房が苦手」という方は、室温を変えるだけでなく衣服で調節するという考え方も取り入れてみましょう。
③ 冷たいものばかりに偏らない
暑い日は冷たい飲み物やアイス、そうめんなどが欲しくなります。
もちろん楽しんで構いませんが、そればかりになると食事量や栄養バランスが崩れてしまうことがあります。
温かい汁物や常温のお茶なども取り入れながら、
「冷たい・温かい」を上手に組み合わせる
くらいの感覚がおすすめです。
④ 軽く体を動かす
冷房の効いた室内で長時間座ったまま過ごしていると、筋肉を動かす時間も減ってしまいます。
そんなときは、
かかとの上げ下げ、足踏み、肩回し、短時間の散歩
など、無理のない運動を取り入れてみましょう。
特にふくらはぎなどの筋肉を動かすことは、下半身の血液を心臓へ戻す働きを助けます。
暑い日の屋外運動は熱中症の危険があるため、室内運動や比較的涼しい時間帯を選びましょう。
⑤ 「睡眠」を後回しにしない
夏の疲れを考えるうえで、忘れてはいけないのが睡眠です。
日本人を対象とした研究でも、夏の高い気温と疲労・睡眠との関連が調べられており、特に睡眠状態が良くない人では、高温時に疲労が強くなる傾向が報告されています。
寝苦しいからといって冷房を切って我慢する必要はありません。
一方で、冷やしすぎて寒くて目が覚めてしまうのも避けたいところ。
「何℃にするか」だけではなく、「朝まで快適に眠れているか」を基準に寝室環境を整えてみましょう。
👵 高齢者は「暑さ」と「冷え」の両方に注意
高齢になると、若い頃に比べて暑さや寒さを感じる感覚、体温を調節する機能などが変化します。
そのため、
「本人が暑くないと言っているから冷房はいらない」
「冷房を嫌がるから切っておこう」
と判断するのは注意が必要です。
一方で、冷房の風が直接当たっていたり、足元だけが冷えていたりするケースもあります。
環境省の熱中症対策資料でも、高齢者は感覚だけに頼らず、温湿度計などで室温を確認することが勧められています。
ご家族や周囲の方も、「暑くない?」だけでなく「寒くない?」「風が直接当たっていない?」と確認してみてください。
☀️ 8月後半こそ「夏の疲れ」をため込まない
夏の後半になると、
「今年も暑かったから疲れているんだろう」
と、だるさを当たり前にしてしまいがちです。
しかし夏の体は、暑さだけに耐えているわけではありません。
猛暑、冷房、屋内外の温度差、睡眠不足、発汗や水分不足――。
さまざまな負担が少しずつ重なっています。
だからこそ、「もっと頑張って体力をつけなければ」と考えるより、
冷やしすぎていないかな?
きちんと眠れているかな?
水分や食事はとれているかな?
少し体を動かせているかな?
と、一日の過ごし方を振り返ってみることから始めてみましょう。
夏の疲れは、「暑さ」だけが原因とは限りません。
冷房を上手に使いながら、“温度差に振り回されにくい夏の過ごし方”を意識することが、残暑を元気に乗り切る一つのポイントです。
📚 参考資料
- 環境省「クールビズについて」
- 環境省「熱中症環境保健マニュアル」
- Ihara T, et al. Fatigue and sleep under large summer temperature differences. Environmental Research. 2015.
※本コラムは一般的な健康情報を紹介するものであり、特定の疾患の診断・治療を目的とするものではありません。体調不良が続く場合や症状が強い場合は、医療機関へご相談ください。

